2016/3/12 名古屋ウィメンズマラソンまであと1日
NAGOYAを彩る女性ランナーたち
E早川英里
(TOTO)
5年連続出場の名古屋の“顔”
新メニュー導入で課題クリアに挑戦

 名古屋ウィメンズマラソンの“顔”となっている。名古屋国際女子マラソンから名古屋ウィメンズマラソンに衣替えをした2012年から、今年で5年連続出場になる(表参照)
 12年大会は自己記録に8秒届かなかったが7年ぶりの2時間28分台で、実業団入りの道を開いた。13年は大幅に自己記録を更新し、トップ集団で戦う自信もつけた。14年は終盤まで優勝争いをして日本人2位となり、自己新とアジア大会代表切符を得た。
早川英里のマラソン全成績
回数 月日 大会 順位 日本人順位 記 録
1 2002 12.08 ホノルル 4 2.32.42.
2 2003 12.14 ホノルル 1 2.31.57.
3 2004 3.14 名古屋国際女子 8 2.30.47.
4 2004 12.12 ホノルル 2 2.28.11.
5 2005 10.09 シカゴ 5 2.28.50.
6 2005 12.11 ホノルル 2 2.32.59.
7 2006 4.23 ロンドン 10 2.31.41.
8 2006 12.10 ホノルル 3 2.32.31.
9 2008 12.14 ホノルル 11 3.07.39.
10 2009 12.13 ホノルル 5 2.44.33.
11 2010 4.18 長野 3 2.33.05.
12 2010 10.31 アテネ 4 2.40.25.
13 2010 12.12 ホノルル 5 2.42.12.
14 2011 11.20 横浜国際女子 12 2.36.37.
15 2012 3.11 名古屋ウィメンズ 11 2.28.19.
16 2012 11.18 横浜国際女子 9 2.33.21.
17 2013 3.10 名古屋ウィメンズ 5 3 2.26.17.
18 2013 9.29 ベルリン 7 2.37.45.
19 2014 3.09 名古屋ウィメンズ 4 2 2.25.31.
20 2014 10.02 アジア大会 4 2 2.33.13.
21 2015 3.08 名古屋ウィメンズ 10 6 2.30.21.
22 2015 9.27 ベルリン 14 2.31.27.

 早川を指導し始めて6年目の山本コーチはトライアスロンの元日本代表で、バイク(自転車)なども練習に導入し、使えていなかった筋肉を使えるようにするなど、独特のトレーニングで早川を復活させた。
「2012年の名古屋は、ロンドン五輪の選考レースでしたが、自分たちは五輪選考は念頭にありませんでした。本当にただ、チャレンジできたレースだったと思います。目標はリオ五輪の代表ですが初心に戻って、あまり選考に関係した戦略とかは考えず、今までやってきたものを全て出し切ろう、早川英里の能力全てで戦っていこう、と言っています」

 気になるのは昨年のこの大会で、「手応え十分の練習」(山本光宏コーチ)ができていたが10位(日本人6位)に終わったこと。13年ベルリンも同様に、練習が良くてもレースで結果を出せなかった。
 それらの失敗を「自分の責任です」と、山本コーチは反省を口にする。
「疲労の抜き方、ピークのもって行き方という点で、自分の見込みが甘かった。ポイント練習をこなす能力は、早川にはあります。それでレースに向けて自信を持とうとするあまり、追い込み過ぎてしまった。同じ選手でも、同じ流れで上手く行くとは限らないということです」

 例年出場していた2月の丸亀国際ハーフマラソンに、今年は出場していない。年末年始に早川が体調を崩したこともあり、例年と同じ流れではまた、負荷をかけすぎるという判断だった。
 山本コーチは丸亀を回避しただけでなく、新しいメニューも導入した。信号の少ない宮古島で、バイク120km+ランニング(10km)というメニューを行っている。
「年末年始に体調を崩したからですが、本人としたら早く距離走を行って不安を取り除きたかったと思いますが、それでは練習をしっかり進めている他の選手の“後追い”になってしまう。先に行くにはどうしたら良いかを考えました。バイクの120kmは4時間くらい脚を回し続けます。脚が動きづらい状態になってから10kmを走れば、距離走以上に股関節を刺激し続けられる。筋肉は疲労しますが、接地がないのでダメージは少なくできます。次の距離走にスムーズにつなげられました。年末年始の体調不良があったから、リカバリーを考えるきっかけになった」

 山本コーチならではの発想だが、選手は初めて行うメニューに不安を持つのが普通である。そこは早川自身にもきちんと目的を説明した。山本コーチ自身が現役時代「いいからやれ」と指導者から言われた経験があり、同じ思いを選手にさせたくないと考えているからだ。
 バイク120kmのメニューを4回行っているが、早川からも「無理しないで良かった」「山本さんの言った通りで成功しましたね」という言葉が出た。

 早川はレース2日前の会見で、「つらかった時期をどう乗りこえてきたか?」という質問に、次のように答えている。
「できないことが多かった私ですが、山本コーチからこの練習をこなせたらまた強くなれる、というヒントをたくさんいただいてきました。そのヒントを試しているうちに試合が来て、ということをここ数年繰り返して、あっという間に5年が経ちました。今回は、山本コーチと一緒にやってきた最大の目標であるリオ五輪の選考会です。やってきたことをしっかり結果に結びつけたい」
 決して力のこもった話し方ではないが、早川の強い意思をはっきりと感じることができた。

 レース前日の夕食後、山本コーチは「これまでの早川で一番落ち着いているし、集中できている」と話した。
「緊張するのはいつものことですが、そこは23回目のベテランですから」
 早川が日本人1位になれば、さいたまの吉田香織、大阪の福士加代子につづき、同学年選手が3大会連続となる。


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